「首切り王子と愚かな女」を渋谷のPARCO劇場で観ました。
いやー面白い芝居でした。この機会にぜひ観て欲しい作品です。
かなり劇的で斬新な演出。当然のことですが、蓬莱竜太という作家・演出家は色々な引き出しをお持ちのようです。演出家というのは舞台をいろんな角度から見ているのだと感心させられます。また、役者全員を使いこなしていることも素晴らしい。役者14名全員に休むことなく仕事をさせています。
全ての役者全員から目が離せませんでした。それも楽しくて一回見ただけでは足りない気がしました。 全ての役者が良かったのですが、まず、井上芳雄さん。ミュージカル界のプリンスと呼ばれていますが、今回も王子役。ただし全く想像と違う王子を、彼しかできない品格を持って表現しているのが素晴らしい、またこの孤独な王子の気持ちを込めた歌が心を打つのです! 次に、伊藤沙莉さん (「【さり】ではなく【さいり】です。」という本も出している女優さん)。もまた素晴らしい女優です。デビドラマで活躍中ですが、2017年パルコ劇場の芝居「すべての四月のために」で賞賛された演技力はもちろん健在で、その小さい身体から放たれる熱いエネルギーに満ちた芝居は観客を魅了していく素晴らしいものでした。
全員のことも書きたいのですが、文字数の関係であと一人だけ書いておきます。東京ゲゲゲイ歌劇団のご存知BOWさんです。今年の2月から3月いっぱい、東京ゲゲゲイ歌劇団の全国ツアーで僕も18箇所の公演で一緒に旅をしていましたので、特別な思い入れもあり、役者としてのBOWさんを観るのは初めてなので、楽しみでした。しっかりきっちり「役者」でした。ゲゲゲイの歌にも「ゲゲゲイのアイドルBOW、・・・・ほんとは女優志望」という歌詞がありますが、その歌詞通り、女優として存在していました。
この芝居の楽しいことはまだまだありますが、もう一つだけ書いておきたいのが、面白い舞台装置というか舞台美術。その舞台美術が変化していくのを最後まで目が離せません。そして、それに伴う役者の動き。美術の松井るみ さんは、いろんな演劇賞を何度も受賞されているので素晴らしいのは当たり前なのですが、演出・照明・音響のスタッフと役者全員で、その美術を思いっきり生かし、使いこなしていることも、いい芝居になっている要因だと思います。
これぞ、役者・スタッフ全員で創造する素晴らしい総合芸術でした。それに伴いお客さんたちも素晴らしい観客の皆さんでした。
今年の演劇賞候補の作品のひとつではないでしょうか。ご期待ください。